サラの裁縫箱

リングピロー製作日記

友達の絵

友達の絵

小学5年生の時、クラスに片方の手首が少し腫れている女の子がいました。
意地悪な男子が”手がデブ!”などと心ない事を言っていましたが、本人は慣れてるからと気に留める風もありませんでした。
ある日、2人1組になってお互いを描くという授業がありました。
隣の席だった私は、一緒に描こうと彼女を誘って、向かい合って絵を描き始めました。
写生だから本来の姿を描くべきなのですが、私は手を細くかきました。
すると彼女が「○ちゃん、そのまま描いていいよ」と言いました。
だから私は長袖の端からのぞいた腫れた手首もそのまま描きました。
すると後日その絵は”上手に描けました”という事で、学校の入り口に貼り出されました。
私は彼女の所に飛んで行って、「どうしよう!みんな見るよ」と言いました。
「良かったね、私も上手だと思ったもん。」と彼女は穏やかに笑っていました。
私は小学校卒業と同時に引越しをしてしまい、彼女とは暫く文通をしましたが、その内手紙のやりとりもなくなりました。
 数年経ったある日、幼なじみから彼女が亡くなった事を聞きました。
やはり手首の腫瘍が原因だったそうです。
当時の私は新しい学校や友人、環境に慣れるのに精一杯で、もらった手紙に返事を書かなかった事もありました。
あの時なぜ文通を続けて、辛い時に少しでも励ましてあげられなかったのかと、今でもとても後悔しています。
 彼女の優しげな顔だちとか細い声は、これからも私の心の中にずっとあり続けます。